2016/08 Matterhorn登頂記(ツェルマットでの日々)

旅の予定

自分が立てた旅の大まかな予定だ。

2016/08/12(金) フライト前日 東京宿泊
2016/08/13(土) フライト当日 07:25発、18:10ジュネーブ着、ツェルマットまで電車で移動。
2016/08/14(日) ツェルマット ブライトホルン単独登山(高度順応)
2016/08/15(月) ツェルマット リッフェルホルン ガイド登山(テスト)
2016/08/16(火) ツェルマット 休息日
2016/08/17(水) ツェルマット ヘルンリ小屋移動(マッターホルンアタックベースキャンプ)
2016/08/18(木) ツェルマット マッターホルンアタック(登頂)、下山、ジュネーブ移動
2016/08/19(金) ジュネーブ観光(マッターホルン登頂予備日)
2016/08/20(土) ジュネーブ 10:30発(フライト)
2016/08/21(日) 日本 羽田 08:30着

以下に、実際の旅の記録をつづります。

2016/08/12 フライト前日

前日に東京に入り、必要な物資を調達して羽田近くの東横インに宿泊。

 

2016/08/13 フライト当日

07:35 羽田発
12:50 パリ着


16:00 パリ発
17:10 スイス ジュネーブ着
19:51 ジュネーブ発 電車で移動
23:36 フィスプ(FISP)経由 ツェルマット着
 
最終電車に乗り込み、運よく当日中に目的地のツェルマットに到着。

「駅から2分」の HOTEL Bahnhof は、すぐに見つけることが出来た。

門限を過ぎているため、予め教えてもらった暗証番号でドアを開錠、フロントに置かれたメモ書きの指示に従い、最上階のドミトリーフロアーで、自分の好きな寝床を決めて荷物を下ろし一息ついた。
「とうとう、ツェルマットに来た・・・。」今朝は東京だったのに、遠くスイスに降り立った不思議な感覚。
荷物を置いて、夜遅いものの少し散歩しようと街に出た。
メイン通りを歩くと、まだ営業している飲み屋がいくつかあった。
遅い時間とはいうものの、物騒な感じはあまりしない。上品そうな観光客が多いこともあるのだろう。
15分程度 街を歩いてホテルに戻り、明日に備えて眠りについた。
明日から、忙しくなりそうだ・・。

主な出費:ケーブルカー往復100CHF、8/14リッフェルホルンガイド料305CHF、ホテル180CHF

2016/08/14 ブライトホルン登頂(単独)

06:30 起床
08:30 街の外れにあるゴンドラに乗車。ゴンドラの駅に向かう途中、マッターホルンの勇姿を目にする。とても感動的な対面だった。

「マッターホルン グレッシャーパラダイス駅」へ。
09:00 頂上駅に到着。標高3883m。

駅から出ると、一面銀世界。そこはスキー場になっていた。

ブライトホルンへの登山を開始。
 

11:10 ブライトホルン登頂。4164m。
 

写真真ん中の単独峰がマッターホルン。角度が違うと大分雰囲気が変わる。あまり格好良くないかも。。
周りの景色は絶景だった。さすがヨーロッパアルプス、日本の山岳風景とは違う。ここに登れただけでも、満足度はかなり高かった。

12:30 頂上駅着
14:00 ゴンドラに乗り、ツェルマットに下山。
街ではお祭りでにぎわっていた。

15:00 アルパインセンターへ顔を出す。日本で予約したガイド登山の最終手続きをし、詳細の確認をする。
16:00 ホテルに戻る。

2016/08/15 ガイド(テスト)登山(リッフェルホルン2928m)

08:00 ゴルナーグラート登山鉄道駅に集合。ガイドのエリックと対面。一緒に行動する登山客と計3名で電車に乗り移動。
08:30 リッフェルゼー駅 で下車。

登山開始。正面に昨日登ったブライトホルン。

リッフェルホルンとマッターホルン。

なかなか大変。。
 

12:00 頂上着 アメリカ人の登山客と一緒に。

氷河が凄い迫力。

これまた、なかなか楽しい登山だった。電車に乗って下山をした。但し、テストとしての手ごたえはイマイチ・・。

下山して、ガイドと面談(テストの結果の通知)。

ツェルマットのとあるレストランのテラス席でコーヒーを飲みながら・・・。
英語が得意でない自分ではあるが、ガイドの話に耳を傾け注意深く聞いたが、理解度は60%程度だった。
まず、明らかなのは マッターホルンへのガイド登山をする許可は下りなかった。
要するに、不合格である。
ガイドは、他のルート(ブライトホルン ハーフトラバース)もガイド登山で登るように言ってきた。
自分は、他の山に登っている時間的・経済的余裕は無いので、すぐにマッターホルンに登りたい。
何とかしてくれと何度もお願いした。しかしながら、それは叶わなかった。
どうやらガイドは、テストのことばかり気にするな。折角、世界有数の山岳エリアに来たのだからマッターホルンだけでなく、色々な山を楽しめと言っているようだった。
いくら話しても答えは変わらないようなので、渋々 話は終わりにしてガイドとも別れた。

「時間がない・・・」予定が狂ったことに、焦りを感じ何とかならないものかと胸がザワついた。
あとは、アルピンセンターで直談判しかないと、事務所に向かった。

再テストの契約

アルピンセンターに行って、ガイドとの話はせずにマッターホルンの登山ガイドの契約をしたいと申し出た。
ガイドは何と言っていたか?聞かれた。
ダメだと言われたが、自分には時間的余裕がない。なんとかならないか?
相談したところ、ガイドに電話をしてくれた。
しかしながら、結果が変わることはなかった。
結果は受け止めて、やれることをやるしかない・・・。指定された、ブライトホルン ハーフトラバースのガイド登山に申し込みをした。
運よく?翌日の予約が出来た。これで受かれば、まだ登頂できるチャンスはある・・。

その日の夜の出来事。

ホテルに戻り、入り口付近のベンチで日本人の二人組に会った。60歳を過ぎたと思われる方達。旅の目的やこの街でどんな過ごし方をされているか?お話をさせてもらった。

聞けば、元お医者さんとそのプライベートでの山岳ガイドさんという関係のお二人だった。聞けば、昨日マッターホルンに登頂したところだとのこと。長年の夢が叶い、幸せな気分で一杯だと仰っていた。うらやましい限りだと思った。

この旅でも、更にイタリアへ渡りアルプス山脈の山々を登る予定だとのこと。60歳を過ぎお医者さん稼業を引退してから、ガイドさんに導かれ多くの登山経験を積み、今般 ヨーロッパアルプスに挑んでいるという。年齢を感じさせない、若々しい熱い魂を感じた。
人生経験も豊富なお二人と色々なお話をさせてもらっているうちに意気投合し、近くのスーパーでお酒を買い込みその場で宴席が始まった。三人で話をしていると、日本人の女性が声をかけてきて、私も話に加わりますとなり、四人で賑やかな宴席となった。
この女性も面白い方で、本場のオペラを世界中に見に行っている。自分ほど鑑賞している日本人は恐らくいないだろうと言っていた。
特にワーグナーがお好きなようで、その魅力について語っていたところ、元お医者さんが私も「ワグネリアン」だが なかなか趣味がいいねぇなどと、その話題に乗っかってくる。山岳ガイドさんも知識はあるようで、自分を除く皆さんでワーグナーの話で盛り上がったりもする。
日常生活の中ではなかなかお目にかかれない、ディープな人たちとの出会いである。話題にはついていけないものの、ちょっといつもと違う世界に自分を放り投げることで、こんな面白い時間が過ごせることが出来るんだなぁと感じた。
今日のガイド登山でマッターホルン登山のテストに不合格だったこと、次にブライトホルン ハーフトラバースのガイド登山で再度テストに挑むこと等を報告した。お二人からは、「ブライトホルン ハーフトラバースもとても良い登山になるだろう。ぜひ楽しむことだ。マッターホルン登頂は、そんなに簡単に実現できるものではない。のんびり構えるのが良い。」などとアドバイスをもらった。
スイスワインを飲みながら、楽しい時間を過ごせた上に、この地で登山を楽しむことに前向きな気持ちにさせてもらうことが出来た。かなりの時間・お酒の量を消費し、気持ち良い気分になったところで 24:00 宴席はお開きとなった。
ドミトリーの我が寝床に戻り、明日の登山に向け 頑張る気持ちを沸かせながら眠りについた。
明日は頑張ろう・・・。

主な出費: 鉄道料金66CHF、8/16ブライトホルンハーフトラバースガイド料665CHF、ワイン2本30CHF

2016/08/16 痛恨の寝過ごし・・

07:00 起床

何となくいやな予感。集合時間はどこに何時だったっけ?
前日は07:45だったが、今日はもっと早かったっけ・・。前日のお酒のせいもあるが寝ぼけた頭の中で、段々と「ちょっとまずいぞ」といった状況がわかりはじめ 青ざめる。
バウチャーを手にして愕然・・。今日の集合時間は06:45だった。諦めてはいけない、遅れてもとりあえずは集合場所へ行こう。と行ってみたが、到着時間07:45。自分のガイドを見つけることはできなかった。
ツアー客を待つ山岳ガイドらしき人に同じアルペンセンターのガイドがいないか、片っ端から声をかけていると、それらしい人を見つけた。どこかに電話をしてくれたが、時間が早いため事務所とは繋がららず どうしようもないと言われてしまった。
「あぁ、やってしまった・・・。」しょぼくれてツェルマットの街中に戻って、ガイド事務所が開くのを待つことにした。

最後のチャンスにかけるしか・・

09:00 ガイド事務所が開き、窓口の女性に寝坊してガイドに会えなかったことを伝えた。「今日はもうムリ。お金も返金はできない。」との冷たい返事。
お金返して・・・。食い下がるも、ムリ・ムリ。 自分が悪いのだから、この失敗については、諦めるしかない・・・。
気を取り直して、翌日に再度同じガイド登山の契約を申し込んだ。・・運良く?空きがあり、契約ができた。
これでもう日程的な余裕がなくなった。明日はテストに合格し、更に次の日にマッターホルンへ挑戦する道を開くしか手がない。

ピンチはチャンス。ここからが本番だ・・。

現地での食事のスタイル

HOTELBanhofは、地下に共同キッチンがある。駅前にはスーパーがあり食材を買えば自炊もできる。外食も良いが、海外のスーパーで食材調達して食事するのも楽しそうだ。昔、一人暮らしを10年ほどやっていたので料理もできなくはないが、手の込んだ料理を作る気にはなれなかった。ハムやソーセージ、卵やチーズと野菜といったもので簡単な食事を作ることはした。チーズもソーセージも、ワインも美味い!次にこの旅をしても、このスタイルは実践したいと感じている。
 

 

救いの神・・・

少しだけ?しょぼくれて、ホテルに戻り ドミトリーフロアーに来ると、新しい宿泊客らしき日本人の若い女性がいた。自分のベッドを決めて荷物を下ろしているところのようだった。
暇なので、お話相手になってもらおうと 声をかけ お食事に誘った。快諾してくれ、夕飯の時間になったら集合、ひとまず解散となった。
夕飯の時間、彼女と合流しお店を探し始めた。どうやら、チーズフォンデュが食べたかったようだ。一人だと殆どのお店でチーズフォンデュは注文を受け付けてくれないのだと言う。自分もそれなら是非とも食べようよ!となり、適当なお店を見つけてチーズフォンデュを食べながらお互いの話をすることにした。
聞けば、20代中盤の方で イギリスにワーキングホリデーで滞在中。美容師として働いているとのこと。今日は、お休みで、弾丸ツアーでこの街まで来た。直感で行動を決めるタイプのようで、アクティブで、物おじしないしっかりとした雰囲気を持ちつつ、気さくな感じで話せる人。若さだけでないしっかりとした意志をもちながらどんどん行動に移すその真っ直ぐな姿勢に心を打たれるものがあった。
彼女と話をしながら、今日のしょぼくれた出来事が些細なことのように思えてきて、ただひたすら目的であるマッターホルン登頂に最後まで希望をつないで前向きに進むことを伝えてくれたように感じた。
食事を終え、宿に戻り 更に色々と会話をした。明日には、もうツェルマットを発たなければいけないとのことだったので、連絡先を交換しあいお互いの楽しい旅を願いながら別れた。

明日も頑張ろう・・・。

2016/08/17 ブライトホルン ハーフトラバース

06:30 「マッターホルン グレッシャーパラダイス駅」に向けロープウェイで移動。
07:00 頂上駅到着、登山開始。
 

まずは、だたっ広い雪原を歩く。
ひとしきり歩いた後、大きな壁のような雪の急傾斜の斜面にアイゼン・ピッケルをきかせながら登り高度を上げていく。
こちらを試すように、結構なスピードでどんどん登っていく。「これが最後のチャンス、テストに受からなければマッターホルンは登れない。」その切迫感から、ひたすら苦しくても必死についていく。稜線付近になると、岩肌が露出している場所が出てくる。やがて雪・岩のミックスとなる中、稜線上を縦走する。両側が切り立った斜面の頂点を必死な思いで渡り歩いていく。
核心部の途中の休憩ポイントで、小休止をさせてくれる。絶景の撮影ポイントでもあり、同じ場所でアングルを変えながら何枚も写真を撮った。改めて見渡すと、すごい場所にきたものだと恐怖感すら覚える。ガイドとザイルで繋がっている安心感が歩くことに集中させてくれる。「You’re Great!」ガイドは自分の頑張っている様子を評価してくれているようだった。
 

10:00頃、核心部を終了し比較的広く緩やかな斜面の稜線に変わっていく。

10:40 ブライトホルン頂上着。
11:30 頂上駅に到着。ガイドにテスト合格を伝えられる。とても嬉しかった。ガイドと別れ下山する。
13:00 ツェルマット着。
15:00 アルピンセンターマッターホルン登山のガイド契約をする。明日、出発の契約が出来た。
マッターホルン登山は、一泊二日で行う。これまで以上に念入りな説明を受けた。代金を精算し事務所をあとにする。

ベースキャンプ ヘルンリ小屋への移動準備

8/19夜には、ジュネーブに到着している必要がある。
明日、8/18にヘルンリ小屋に宿泊、8/19にマッターホルンアタックし登頂後、その足でジュネーブまで移動が必須だ。
その為には、この日にホテルを出る際、アタック以外の不要な荷物をまとめて預けておく必要がある。マッターホルンから下山後に、すぐに荷物をまとめて電車に乗り込み、ジュネーブへの移動の準備をしておかなければならない。
アタック用のザックに最低限の必要な荷物をまとめる。そして、それ以外の荷物をまとめた。ホテルバンホフの地下に、荷物をストレージするロッカーがある。そこにその荷物を預けた。

明日の準備を終え、地下の共同キッチンで自炊で食事をしていると、日本人の旅行者(Oさん)と出くわした。
食事をしながら、お互いの旅について話した。Oさんは、フランス シャモニーからツェルマットまでの山岳路(オートルート)を縦走し、今日最終目的地のツェルマットに到着したところだとのこと。これまで、ほぼ全てをテント泊で過ごしておりここにきて自分にご褒美でホテルに宿泊しているとのこと。
オートルートがどのくらいすごい旅なのかはわからないが、海外で一週間以上もテント泊で山岳路の旅を続けてきたと聞くだけで、十分に素晴らしと感じる。無事に目的を果たしたことの祝福をしながら、旅の思い出話を聞かせていただいた。
こちらは、明日ようやくマッターホルンガイド登山まで辿り着いたお話をして、大いに興味を持って下さり明日以降の健闘を祈ってくださった。
話も尽きない中、連絡先を交換してお互いの旅の無事を祈り別れた。

さあ、明日はベースキャンプへの移動だ。